皆さま、ご安全にお過ごしでしょうか!FP修行中のオットー@CFPです。
シン・NISA?というのは正式名称ではなく、あくまで通称ですが、2024年からいよいよNISA制度の恒久化が始まります。
その際に、国民の資産形成を助ける中立的なアドバイザーが必要だよね、という話になっています。
なぜなら、金融機関に所属する人はどうしてもわが社の利益優先になってしまうし、そのやり方が(端的に言って)汚いよねというのが国(金融庁)の現状認識だからです。
金融庁はなんども顧客本位の運営を行うよう業界に指導しているところですが、どうしても自社利益を優先してしまうので、手を焼いているというのが実情です。
なので、新NISAの開始で国民の長期的な資産形成を促進するための具体的なアドバイスは、企業が儲かる商品ではなく、国民がもっとも利益を得る商品選択ができるように、中立的な立場でのアドバイザーを想定しています。
それについて、非常に興味深い記事を発見しました。
なかでも、このあたりの件は非常に味わい深いので、何度も読んでしまいました。長くなりますが、引用してみましょう。
ただ、課題もあります。金融機関からのキックバックに依存しない、非富裕層向けのアドバイスが果たしてビジネスとして成立するのか、そして肝心のなり手が本当に存在するのかという問題です。
一般的に、事業者がアドバイス業務を自社ビジネスの中心に位置付ける場合、メインターゲットは実入りの大きい富裕層に偏りがちです。一方、今回の規制緩和で言及が解禁されるつみたてNISAは中間層の利用を想定した制度。まとまったアドバイス料を取り立てることは難しく、ビジネスの持続性を確保する特別な仕組み作りが必要となりそうです。
もちろん中立的アドバイザーに対し、国が直接的、間接的に資金的支援にするという手もありますが、国民の資産形成のために多額の税金を投入するとなれば本末転倒との反発も起こりかねません。実際、金融審メンバーもこうした批判に対して神経質になっており、報告書を策定する過程では当初の文案にあった「アドバイザーがビジネスとして成り立つよう育成していく」という表現が、委員から上がった懸念の声を受けて最終版で削除されるという出来事がありました。
出典:フィンテックジャーナル「謎の新業態「中立的アドバイザー」とは? 新NISAとともに政府が「推す」理由」(太線筆者)
まず、最初の太線ですが、なり手はいますよ!ここにいます!どこの機関にも所属しない完全に独立した中立な立場のCFP認定者が、ここにいますよ!
CFP認定者の中でも比率は少ないですが、それなりの人数がいるはずです。全国で数千人はいると思われます。
そして、もっとも大きな問題は、その「中立的アドバイザー」はいかにしてフィー(報酬)を得るのかという点です。つまり、商売として成立しうるのかという観点です。
この「中立的アドバイザー」の具体的ななり手としては、金融業界、証券業界等のOBくらいじゃないかと言われていますが、一番手はやはりFPだと思います。
まずCFP認定者について考えてみると、「CFP®認定者の倫理原則」の第1原則「顧客第一」で、「顧客の利益を最優先させなければならない。」と明確に宣言しています。
さらに、日本FP協会は金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」との整合性についても以下の通り明言しています。
平成29年3月30日、金融庁が公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」では、金融事業者※が順守すべき7つの原則と詳細が掲げられ、その中の、原則2.では「顧客の最善の利益の追求」が定められています。これは「CFP®認定者の倫理原則」の第1原則と内容が一致しています。日本FP協会では、「CFP®認定者の倫理原則」以外にも会員倫理規程、業務基準規程を施行しており、これらの諸規程は、金融庁の同原則に定められた内容を網羅しています。このことから、CFP®認定者は、同原則に沿った金融サービスを提供する最適な担い手であるといえます。
出典:日本FP協会HP
つまり、誰が「中立的アドバイザー」たりうるのかという議論はすでに解決済みのはずなのです。
でも、お商売として成り立つかどうかは、また別の話。誰もなり手がないとすれば、もちろん食べていかれないからに他なりません。
「もちろん中立的アドバイザーに対し、国が直接的、間接的に資金的支援にするという手もありますが、国民の資産形成のために多額の税金を投入するとなれば本末転倒との反発も起こりかねません。」とありますが、そもそも国民の資産形成が必要と判断して政策を打ち出したのは国であり、その政策決定までに多くの税金が使われています。
さらに、それを具体的に推進するためにも金融庁をはじめ、多額の税金が使われるはずです。国の政策を遂行するのに税金を使わずに行うことはありえません。
現行の金融広報中央委員会が2024年から「金融経済教育推進機構」(仮)に衣替えする予定ですが、もちろんそれなりに業務委託する予算も持っているはずです。
なのに、国の政策を実現する「中立的アドバイザー」はボランティアで行なえとでもいうのでしょうか。あまりに非現実的ではないでしょうか。
金融経済リテラシーを普及してゆく啓蒙活動の一環として、相談者一人あたりいくら、1時間あたりいくらといった、フィー(報酬)を国民が直接負担するのではなく、国が教育費、宣伝費として負担するという考え方もありうるのではないのでしょうか。
具体的な対策としては、今般政府の定番手法となった基金造成メソッドで、当初だけ政府が何億円か出捐して、ファンドの運用益で長期的に「中立的アドバイザー」のフィー(報酬)を支援してゆくといった手法もありうるのではないでしょうか。
金融、証券業界がその得意技を持ち寄って資産運用すれば、それなりに成り立つメソッドではないでしょうか。
じゃないと、だれも手弁当で「中立的アドバイザー」業務には手を上げませんよね。
その後の議論の中では、フィー(報酬)の負担を個人ではなく、個人が所属する民間企業などに求めるような案も出されているようですが、果たして誰が負担するのが適切なのでしょうか?
これはもちろん日本FP協会の直面する問題でもあり、いずれ何らかの具体的な情報提供や活動方針が示されるだろうと思いますが、まずは問題提起を書き残して置きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。本日もご安全に。